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フルフィルメントとは 新時代のEC事業を伸ばす代行サービスの選び方、3PLとの違い

フルフィルメント
# 物流代行

フルフィルメントとは、物流における商品保管、ピッキング、梱包、配送などのほか、EC事業に必要な受注、顧客対応やささげ作業(撮影・採寸・原稿作成)など、一連のバックヤード業務全般を意味します。物流部分に特化して業務を代行する3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)と違い、フルフィルメントは受注から発送まですべてのプロセスをカバーします。近年、EC市場の急成長に合わせてOMO(Online Merges with Offline)の概念が浸透し顧客が求める購買体験も変化、物流2024年問題などの社会課題も無視できない状況のなか、本記事では高度化するEC事業のあり方について、物流のアウトソースを踏まえた戦略やその効果、パートナーの選び方について解説します。

ECでの購入後、ヘッドフォンが手許に届いて喜び、早速スマートフォンで撮影しシェアしようとする消費者

フルフィルメントなどのアウトソースが重要化した背景

コロナ禍でEC需要拡大、購入後すぐ届く配送時間が当たり前に

アッカ・インターナショナルでPRを担当している亀谷です。新型コロナウイルス感染症の影響で、世界的にこれまでの商流が大きく変化しました。そのひとつがEC事業の拡大です。2020年から始まったコロナ禍にあって、消費者は実店舗での買い物を控え、インターネット経由での購買行動が活発になりました。そうした商機を逃すまいと、EC専業の事業者だけでなく、実店舗をもつ多くの企業もEC強化に乗り出しました。

そして日本市場においては2021年10月に、世界(WHO)では2023年に緊急事態宣言が解除されても、ひとたび広まった傾向は消失せず、多くの市場においてECを除外して考えることはできなくなりました。こうしてECの利用が一般的になった現在、消費者が「欲しい」と思った場合にECで購入し、実店舗同様に商品がすぐ入手できることは顧客満足度を左右する要素のひとつとなり、そうしたニーズへの対応が求められています。

もっとも、すぐに商品を手元に届けたいというニーズはコロナ前からあり、Amazonなどの大手ECプラットフォームを筆頭に、物流業務のリードタイム短縮の動きはありました。その流れがコロナによってますます加速されたといってよいでしょう。

物流2024年問題で業界全体が変化 オートメーションなど高度化・複雑化が進行

一方、そういったECの隆盛や「働き方改革」法案を要因として、物流業界では新たに「2024年問題」が発生しました。輸送を担うトラックドライバーの労働時間に上限が課され、これまでのようにモノが運べなくなることが懸念されています。

その影響は物流のリードタイムのみならずコストにも波及しており、多くの事業者はロジスティクス全体を含めたデリバリー体制を戦略的に考える必要に直面しています。

こういった状況に対し、デジタル化・オートメーション化により効率化・高速化させる手段も増えており、それらを採用する倉庫・物流業界が複雑化・高度化するなか、事業規模の拡大に応じて自社で全てをコントロールすること、または自社でその知見・経験を蓄積することが困難になりつつあります。

フルフィルメント業務の先端事例

物流のオートメーション化でリードタイム短縮、社内工数削減

先述のようなトレンドに対し、最先端で対応しているのはやはり米Amazonが挙げられます。同社は倉庫・物流におけるオートメーション化、ロボット活用も早期から積極的に取り組んでいました。

同社は2012年には現Amazon Robotics(旧Kiva Systems)を買収しAMR(自律移動ロボット)を自社開発、現在の「翌日・当日配送」サービスを支え、不動の評価・顧客満足度を実現する重要な要素となっています。

我々がご支援したケースでは、大手アパレルブランドA社が挙げられます。同社が契約していた倉庫では、以前は手作業でピッキングなどの業務を行っていましたが、ECでの受注量拡大とともにフルフィルメント業務全般の効率が低下していき、受注から発送までの平均リードタイムが48時間を超えることが常態化していました。

これに対し、総合的な体制の見直し、一部プロセスのオートメーション化、顧客対応の代行を専門チームが担うことで受注から発送までの平均リードタイムは12時間以内、顧客アンケートでの満足度も向上させることができました。

大手アパレルブランドA社 フルフィルメント委託前と委託後の違い
倉庫管理のみ委託時 フルフィルメント委託後 効果
商品情報制作(ささげ業務) 商品撮影などの別パートナーに個別で委託、商品発送。受け取った商品情報は自社でEC登録 フルフィルメントの一部として同じパートナーに委託、商品情報のEC登録も委託 EC関連業務の委託先と同じパートナーで新商品の写真撮影、EC登録を実施することで工数削減、リードタイム短縮
EC受注管理 自社で受注情報等を管理、担当者が内容を判断して指示 フルフィルメントの一部として同じパートナーに委託 担当者が内容を確認し受注情報を送付する等で工数削減、リードタイム短縮
入庫、ピッキング、仕分け等 委託先担当者で人力対応 マテハン機器、AMR(自律移動ロボット)などにより一部自動化 自動化により工数削減、ヒューマンエラー減少
検品 委託先担当者で人力対応 委託先担当者で人力対応
顧客対応(カスタマーサポート) 自社対応、委託先へ連絡 委託先担当者が直接対応 物流側で顧客対応することで、顧客対応速度、内容が向上
フォークリフト 委託先担当者で人力対応 AGV(自動誘導車)導入により一部自動化 自動化によりリードタイム短縮
在庫管理 委託先担当者で人力対応 マテハン機器、AMR(自律移動ロボット)などにより一部自動化 自動化により工数削減、ヒューマンエラー減少
入庫、ピッキング、仕分け等 委託先担当者で人力対応 委託先担当者で人力対応

上記のような事例は取り扱う商材に限らず、アパレルでも、雑貨でも、本でも同様に改善を図ることが可能です。

オートメーション化された倉庫内のベルトコンベア、ピッキングを自動で行うロボット
Amazonほど大規模でなくとも、人間の手作業から少しづつ自動化へ移行することで受注から発送までの時間を大幅に短縮でき、顧客満足度を上げられる

未来を見据えたEC事業のフルフィルメント戦略

フルフィルメント代行サービス、活用のポイントは?

EC事業者がフルフィルメント代行サービスをうまく活用する際のポイントがいくつかあります。そのひとつは中長期的な自社事業のビジョンのうち、物流に関するものを整理しておくことです。具体的には以下のような項目を事前に検討して、委託先候補に相談することをお勧めします。

  • どう展開していきたいのか(今よりもブランディングしたい、顧客の層を広げたいなど)
  • どれぐらい成長させたいのか(売上目標、顧客数など)
  • そのために、物流面でどういう状況を目指したいのか(リードタイム短縮、社内工数削減など)
  • いつまでにそういう状況を目指したいのか
  • 投資できる予算感はどれくらいか

事業全体/ECの規模、取り扱う商材、対象エリア、生産拠点などはもちろん、昨今の国内市場環境を考慮すると、上記のようなビジョンによっても目指す倉庫・物流のあり方、オートメーションの仕方、改善のステップが変わるからです。

一方で「何をすればいいのか分からない」、「どこから手をつければいいのか判断できない」といった場合においては、戦略レベルのコンサルティングから対応できる委託先を探すことも選択肢のひとつです。

一気通貫で対応できるフルフィルメント代行を選ぶ

また、いわゆるVUCAな時代における今後の物流のあり方を検討するにあたって、デジタルとリアルが混ざり、複雑化・高度化するモノの流れの各プロセスを別々の委託先に任せると事業全体の効率化が難しくなることは自明といえます。

このため自社に物流関係の専門知識をもつ人員が不足しているなら、EC事業者側の戦略を理解でき、受注以降のプロセスを一気通貫で担った経験を持ち、その最適化のノウハウを蓄積し自社と伴走できる相手を選ぶことがもうひとつのポイントです。

フルフィルメントの業務範囲全体を委託しなくとも、そういった事業者と密に連携できれば物流に関する知見を社内に貯めることも可能になり、ひいては顧客満足度向上、売上拡大につなぐことができます。

フルフィルメント代行のコスト相場

EC事業に必要な物流のコストには、大まかには以下のような種類があります。

  • 固定費
    • 保管(坪あたり)
  • 変動費
    • 倉庫作業料(入出庫、ピッキング、検品などの人件費)
    • 梱包・流通加工
    • 配送
    • ささげ業務(商品撮影、採寸、原稿制作などの作業費)
    • カスタマーサポート

これらのうち、保管・倉庫作業・梱包・配送といった物流業務に関するコスト全体では、EC事業の売上の5~6%程になるのが一般的な水準だと言われています。

フルフィルメント代行サービスでは、これらを総合的に判断して料金が個別に見積もられるため、取り扱う商材、量、地域、取引量、倉庫の種類、そして導入したい設備や体制等によって初期費用も大きく異なり、事業者ごとの事情によって掛かるコストは千差万別です。

保管料

あくまで参考値ですが、英大手不動産サービスSavillsの調査によると、2024年3月時点での倉庫業における賃料は以下のように示されています。

  • 東京エリア
    • 1坪あたり4,620円(前年同期比2.4%増)
  • 大阪エリア
    • 1坪あたり4,240円(前年同期比0.5%増)

数万円程のシステム利用料・業務管理料なども別途必要ですが、必要な面積が30坪の普通倉庫(常温倉庫)であれば、倉庫保管料そのものは13.5万円程になると想定できます。

倉庫作業料

入出庫やピッキング、検品などに必要な作業料は商品1個あたりで計上される変動費です。これらはどのような作業を必要とするかで算出方法が変わってきますが、入出庫やピッキングは1個あたり10~30円だと考えるとよいでしょう。検品は内容次第で1個あたり10~100円程度と開きがあるため、月次1,000個程度入出庫件数があるならば、概ね10万円前後になると想定できます。

梱包料・流通加工料

商品自体の組み立てや包装、ギフトラッピングに掛かる流通加工料と、運送に必要な段ボール詰め等の梱包料も商品1個あたりで計上される変動費です。1個あたり200~300円程度であるため、月次1,000個程度入出庫件数があるならば、概ね30万円前後になると想定できます。

配送料

顧客に商品を届ける配送料金も変動費で、重量や大きさ、距離や各オプションで大きく異なるため、1個あたり600〜1,200円の開きがあります。また、先述の物流2024年問題もあり今後のコスト増が見込まれているため、取引件数次第ではEC事業全体の効率化をより考慮に入れた方がよいでしょう。

ささげ業務

ささげ業務のうち、商品撮影の代行を専業の事業者に委託する場合、単純な物撮りで商品1点あたり1,000円程度になる場合もあれば、スタジオやモデルの有無など、撮影内容によっては商品1点あたり1万円を超える場合もあります。採寸、原稿制作についても商品の複雑さにより1点あたり500〜5,000円程の差が開きます。マーケティング、商品情報の登録作業を含めた事業全体を考慮に入れ、自社で担う部分、委託する部分を検討しましょう。

カスタマーサポート

カスタマーサポートの代行を専業の事業者に委託する場合、料金体系が月額固定型と従量課金型に分かれているケースもありますが、月額固定型でも上限対応件数が定められていることが多く、月次の対応件数、内容次第で料金が変わります。月額固定型でも5~30万円、従量課金型でも1件あたり100~1,000円と大きく差が出るため、顧客満足度に必要な要件を物流業務とあわせて考慮し、外部委託を検討しましょう。

まとめ

インターネットを介した取引は今後も増大し、店舗とECの垣根はどんどん曖昧になるでしょう。その反面、トラックドライバーだけでなく物流倉庫の作業を担う人材も不足し、コストも増える傾向にあります。これらを踏まえると、事業規模に合わせてフルフィルメント代行サービス等のアウトソース活用は重要な検討事項だといえるでしょう。

アッカ・インターナショナルでは、物流2024年問題などが議論されるよりも前から本記事にあるような取り組みを支援・代行してきた実績があります。フルフィルメントにおける各業務(保管、ピッキング、ささげ業務など)を個別で対応することはもちろん、EC事業全体を俯瞰した事業戦略、マーケティングについてもご支援が可能です。以下ボタンよりお気軽にご相談ください。

執筆者

亀谷 由加

セールス PR担当